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救急医療の崩壊 

救急医療は、三重の困難さに直面している。第二、第三の問題が、第一に挙げた人手不足を悪化させている。

一つは、人手不足。救急医療を担当する医師が、加速度的に減少している。これは、高次救急だけでなく、最初に軽症の急患を診る一次救急でも同様だ。もともと、当直医は、入院患者の急変に備えるために当直するのであり、救急外来は、例外的に診ればよいことのなっている。しかし、その官僚の通達は、全く反故にされている。36時間連続労働が、横行しているのである。そのような現場から、医師は立ち去っている。

第二に、救急医療が、生命が救われるかどうかの剣が峰にかかわる医療であり、結果が悪いと、訴追されることが多くなってきた。過失致死罪の適用によって、数多くの事例が、訴追されている。民事裁判についても同様だ。それを避けるために、救急を扱わぬ医療機関が増え、救急を扱うとしても、責任をもって医療を出来ない場合は、急患を受け入れぬケースが増えている。福島地検が、大野病院の加藤医師を訴追したときに言った言葉「一か八かでやってもらっては困る」を、現場の医師達は深刻に受け止めているのだ。

第三に、救急医療が、採算が合わない赤字部門である。重症患者を収容するICUでは、一ベッドあたり、年に1500万円程度の赤字になるらしい。一次救急でも、採算は全く成り立たない。救急病院を引き受けることによる地方自治体等からの助成など殆ど足しにはならないのだ。

ここで報道されている救急搬送の問題は、大阪だけの問題ではない。今後、全国的にさらに悪化して行くだろう。特に、休日が続く時期に、重篤な急性疾患にかかると、深刻な問題になりうる。救急の情報システムを充実させることによって、この危機を乗り切ろうという行政・マスコミのキャンペーンにはあきれるばかりだ。

救急医療だけではない。一般の医療も、診察・検査・手術などの待ち時間は長くなることだろう。英国のサッチャーが犯した過ちを、日本の官僚もそのまま犯している。英国の医療崩壊から何も学んでいない。マスコミも、それを全く報道しない。



以下、引用~~~

20回以上の要請320件 3倍増、大阪市の救急搬送
08/02/15
記事:共同通信社
提供:共同通信社


 大阪市内の救急搬送で病院に患者の受け入れを20回以上要請したケースが2007年に320件あり、06年の104件の3倍以上に上ったことが14日、大阪市消防局のまとめで分かった。

 最も多い要請回数は63回。現場到着から病院到着までにかかった時間は最長で5時間13分だった。

 急増の原因について市消防局は「不明」としているが、比較的重い症状の患者や負傷者を扱う救急病院の減少が背景にあると見ている。

 消防局によると07年の出動件数は20万4373件で、20万5036件だった06年より微減。20回以上要請したのは午前零-3時が101件と最も多く、午後9時-午前零時が76件と、病院の態勢が手薄な夜間から早朝に集中。

 患者の状況では、飲酒や薬物多量服用、内科と脳神経外科といった異なる分野にわたる診療が必要な症状があるなどした場合、搬送先確保が特に困難になったという。

 昨年4月、80代の女性が市内の自宅で吐血。26回の要請を繰り返す間に、女性は救急車内で意識を失い、約54分後に病院に到着したが、間もなく死亡した。

 6月には30代男性がマンションから転落、受け入れ先が見つからず計40回要請。1時間19分後に病院に到着し、死亡が確認された。いずれも死亡と搬送先選定に手間取ったこととの因果関係は不明という。

 市消防局は「救急医療体制を所管する府や、国に改善を働き掛けていきたい」としている。

コメント

お久しぶりです。

 一番弱いところから崩壊が始まり目に付くのは仕方のないことで実際その通りなのですが、救急崩壊は医療崩壊の一症状でしかありません。
 医療崩壊は医師不足が原因のように世間で認知されつつありますが、元をたどれば「医師不足」は「医療費不足」に遡ります。
 そのことに大衆が気がついたときには「後の祭り」なのでしょうね。
 
 その時までにこの業界から足を洗っておくべきか、それともこのまま片足を突っ込んだままでいくのか、今後の自分のスタンスについて悩みが尽きないこのごろです。NUT先生のようにはまだ決心がつきません。

救急医療

よく採算が合わないと聞きますね。
仮に、救急医療を何とか立て直すには、診療報酬の増額くらいしかないんでしょうかね?
>救急病院を引き受けることによる地方自治体等からの助成など殆ど足しにはならないのだ。
↑これ、地方や病院によっても違うでしょうが、いくらくらいなんでしょうか。
我が職場では、いまだに「救急指定のお金をもらってるんだから、患者を断るのがおかしい」と言います。
かなり莫大なお金をもらってるような感じで受け止めてるようで。
患者が満足するような救急医療をしたら、大変なお金になりそうですね。

ハーフドロッポ先生

医療費が、低廉になるのは良いことだというのが、国民の認識なのでしょう。国が出すお金を渋って、行く行くは公的保険を御破算にし、高い民間保険を買わせたいと、官僚は画策していることが分からないのでしょうね。

仰るとおり、低医療費政策の成れの果てが、今の日本の医療の現実でしょう。櫛の歯が抜け落ちるように、まだら状に機能しなくなってゆくのでしょう。

ハンドルの文字通り、ハーフドロッポされることを、某BBSで知りました。何年かかるか分かりませんが・・・きっと10年以上の単位でしょうね・・・状況が改善する、ないし、先生を必要とする状況になるのは。良い道が開けますように。これからの若い世代の方々は、本当にお疲れ様ですと申し上げたいです。リタイアしても、必ず援護射撃をし続けたいと思っています。

たかさん

救急病院の公的助成は、規模にもよりますが、経営を好転させるような額では決してないようですよ。現に、救急病院の看板を降ろす病院が、続出しているようです。

そうなんですよね、救急医療は、不採算です。それに、訴訟リスクもあります。それから、昔はあまりそうしたことはなかったのですが、患者さんの無理難題・クレームが、救急を担当する医師の士気をくじいている面もあります。我が弱小診療所でも、夜間に仕事場まで出向いて診た患者さんの父親の方から、カウンター越しにすごまれ身の危険を感じたことがありました。それ以外にも、救急は原則一人でやるので、事務処理が出来ず、支払いは後日にして貰っているのですが、支払いに来てくださらない方等も結構な数になってきました。

患者さんも大変なのかもしれませんが、医療機関もかなりしんどい状況なのですよね。医療機関が無くなって初めて国民の方々はことの重大さに気付くということになるのでしょう。残念ながら・・・。

救急病院の公費助成

http://www.pref.kyoto.jp/yosan2/resources/tousyo18-betten05.pdf

ここに元データがあるのですが、そこからの引用で、

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純粋に「救命救急センターの運営に対する助成」であれば、表3行目の「救命救急センター運営助成費」がそれに該当します。

この場合で申しますと、

・京都第一赤十字病院
・京都第二赤十字病院

の2病院に対して

国:110,698千円  京都府:110,698千円 の助成という事です。

なお、極単純に2病院に同額が補助されると仮定しますと1病院当たりの助成額は

国:55,349千円 京都府:55,349千円 計110,698千円 になります。

なお、この補助金は国・自治体・事業者(病院)での負担割合が1/3づつですので各病院とも 55,349千円の持ち出し(=救命センターにおける医業収益で賄う?)となります。

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補足で挙げれば、これもコメントからですが、

『実を言うとうちの病院での救急診療に関する地方交付税交付金が約7000万なんですよ(ど田舎ですが一応扱い上は二次救急)。で、救命センターで1億の訳がないという思い込みがありました。』

補助金・助成金の実態は窺わせるものです。

Yosyan先生

情報をありがとうございます。各病院の予算規模は分かりませんが、救命センターの維持には不十分な助成であることは確かでしょうね。

救急告示病院への助成は、京都全体で2000数百万円とありました。これも、マンパワーの確保の足しには全くならないことでしょう。

今年の新年会で、厚生労働大臣歴任者達は、「朝令暮改が過ぎた」と反省していたそうです。先代のカメムシさんとか、津島氏とか・・・。だったら、すぐに元に戻して欲しいものです。ネットからの情報発信によって、彼等に本当に反省をしてもらいましょう。痛みを知ってもらわねばなりません。

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