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児童生徒の不登校・自死の問題 

開業したころ、小学校高学年の女の子が患者として何度か来院した。当初、身体疾患だと思ったが、結局不登校の問題であることが分かった。何度か話を聞いたが、やはり解決せず、家内の診療所に紹介した。その子のことを思い出して、家内に尋ねてみた。彼女も記憶は朧気・・・それはそうだもう20年近く前のことだ。母子関係の問題だったらしく、短大を出るころには、良くなっていったらしい。

母子関係は子供にとって大きな影響を及ぼす。

一つは、遺伝の問題があるのだろう。うつ病圏の遺伝的体質、発達障害等々・・・ただ、こうした遺伝的なもので人間の優劣がつくことはない。我々は、生き難さに関係する性格等を誰でも親から受け継ぐ一方、それが優れた能力として開花することもある。国連で演説したグレタを観よ、彼女はアスペルガーであることを告白しているが、その形質がなければあれほどまでに徹底した運動を起こせなかった。だが、こうした遺伝的な体質は、時としては社会適応に問題を生じさせることもある。

生活環境を共にしていることも、母子関係が子供の成育に及ぼす影響が大きくなる因子だ。当然のことながら、毎日生活を同じようにしていることも重要だろう。母親の生き方を、子供は学習して育って行く。

勿論、父親の関与も同様にあるが、生活を共にしている時間が長いのは母親。遺伝子の半分は父親から受け継ぐ。一旦書いたポストにこうして書き加えているのは、母子関係がことさら重要だと強調したいわけではなく、また母子関係も子供の成育の最初の人間関係として重要だと言いたいだけだ・・・かなりクドクなってしまった。

その女の子は、来た時に何か悲し気な眼差しで、もの静かだったことを覚えている。家内のおぼろげな記憶では、母親と離れて暮らすようになって改善していったらしい(これはあくまで一つの例で、母子関係に問題がある場合、こうすれば必ず解決するわけではない)。

この子以外にも、何人か不登校のお子さんを診せていただいたが、まず親御さんには、「すぐに学校に行かせるという思いを捨てること」といって診療を始めた。だが、不登校は、子供だけの問題ではなく、対応に難儀することが多かった。その小学校高学年だった女の子も、もう結婚しているかもしれない。どのような人生を歩んでおられるのだろう・・・。

不登校の問題に関してもう一つ棘のようにこころに刺さっていることがある。10数年間、ある小学校の校医をしていた。校医といっても仕事は多くなかった。予防接種と検診、それに年に一度ある「保健委員会」という関係者の集まりに出て、先生方、関係者が児童の健康発達面について報告されるのを聞き、適宜コメントをすることだけだった。その委員会なるもの、シナリオが出来上がっており、報告書に沿って淡々と進む。最後に、いつも私は「不登校」児童はいないか尋ねた。頻度からすると、2%程度は不登校児童がいるからだ。正確な児童数は思い出せないが、一学年2クラスだったので、300から400名程度だったのだろう。従って、確率的に数名は不登校の子がいることになる。だが、学校側の返答は、決まって不登校の子はいません、というものだった・・・それ以上、突っ込むことはしなかったのだが、不登校の子の問題では家庭の問題もあることが多く、学校がそうした子供を把握して適切な対応をしないと、表に出てこないことが多い。最初に述べた小学生も、最初身体症状を訴えての来院だったわけで、医療機関側で不登校の児童を見出すのは難しい・・・。私が校医をしている間に、本来ならば何らかの医療が必要だった不登校児を見逃してしまっていたのではないか、という思いが時々棘のように意識に浮かび上がってくる。

こんなことを思い出したのは、ある新聞のコラムで、元文科省次官の前川喜平氏が、不登校と児童の自死について書いておられるのを読んだためだった。

前川氏によると、文科省の調査で、2018年度の不登校児童生徒は、164、528名で、前年比14.2%増加だったらしい。2012年度からの6年間では1.5倍に増加している。さらに、小中高生の自死は2018年度331名で前年度比32.8%の増加だったようだ。不登校の原因としては、家庭の問題が最多で37.6%、(いじめ以外の)友人関係27.8%、学業が21.6%だった由。前川氏も指摘しているが、学校の問題で不登校になった例が一桁台と少ないが、これは学校側が調査しているため、学校自体の問題を原因としない力が働いたのではないか、とのことだった・・・私が校医をしていた小学校のことを考えると、ありそうな気がする。最近神戸の中学校の教師同士の虐めというか刑事犯罪の事案が報道されているが、学校内・教師間でもきっと様々な問題があり、それが子供たちに悪い影響を及ぼしている可能性があるのではないだろうか。

学校が、本来とても楽しい場所であれば(それは簡単に実現しないこともよく承知をしているが)、少なくとも家庭の問題で不登校になるケースは少なくなるのではないだろうか。ただ、最近、貧困により不登校になる子供も増えているらしく、やはり社会の在り様が、子供の世界に暗い影を落としているということなのかもしれない。

あぁ、もっと真剣に子供たちのことを考えてあげることができなかったかと思い返すこともある。あの保健委員会でもっと突っ込めなかったか・・・だが、一介の小児科医にできることは余りに少なかった。学校関係者には、学校が子供たちにとって救いの場、家庭環境を補完する場になるように是非努力してもらいたいものだ(多くの場合養護の先生方は限られたリソース、権限のなかでよく頑張っておられた)。それに、貧困、それにメンタルな病気の問題を扱う専門家を児相や関係する役所の部門に配置してもらいたいものだ。こどもがこれだけ不登校になり、ましてや自死する世の中であって良いはずがない・・・。

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