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まず謝罪を、という指針の不合理 

診断・治療が、細分化され、複雑な手順を踏む現代の医療にあって、医療事故は、残念ながら不可避である。一つ一つの医療事故から教訓を得て、同じ事故を繰り返さぬことがとても大切なことだ。一方、医療事故に遭われた患者さん・そのご家族にとっては、病気によって精神的に追い詰められていることに加えて、医療事故は大きなストレスになり、医療従事者への不信感が高まることになりがちだ。

医療事故に遭われた患者さん・ご家族に、どのように対処すべきか、全国社会保険協会連合会(全社連)が、マニュアルを策定し公表した。その内容は、驚くべきものだ。医療事故が生じたら、過誤が医療側にあるなしに関わらず、患者さん・そのご家族に「謝罪」せよ、ということだ。

このマニュアルは、ハーバード大学がまとめた「WHEN THINGS GO WRONG RESPONDING TO ADVERSE EVENT」というタイトルのマニュアルを翻訳し、「修正した」ものらしい。医療事故の原因が明らかではなく、その責任がどこにあるか明らかになる「前に」、まずは「共感表明謝罪」を医療従事者に要求するという考えが、このハーバード大学のマニュアルによったものなのかどうか知りたいと思い、ハーバード大学版のマニュアルを、ざっと読んでみた。ここ

全社連のマニュアルは、ハーバードのマニュアルとは思想的に根本的に異なる。ハーバード版の大まかな内容は以下の通り。

『医療事故が起きたときには、まずはその事故に対処すること。さらに患者さん・ご家族に迅速に何が起きたかを説明することが肝要だ。誰の責任かを述べる必要はない。医療事故に医療側の過誤が明確でなければ、上記の説明とともに、遺憾の意を表明するべきだ。謝罪すべきは、医療側に責任がある、即ち過誤であることが明らかになった場合である。』

明らかに、遺憾の意を表明するということと、謝罪することが場合分けされて記されている。全社連版の過誤の有無に関わらず、まず謝罪せよというテーゼとは明らかに異なる。誤解を恐れずに言えば、謝罪を最初にすることが、後々患者サイドと医療従事者サイドの間でボタンの掛け違えになることを、我々医療従事者は、過去の医療事故訴訟の多くの例から学んできた。医療事故に真摯に対応し、その情報を、できるだけ早急に包み隠さず患者さんに伝える努力をすることは、とても大切なことだが、この謝罪をまずすべきだという、全社連版のマニュアルの指針は、問題を解決せず、紛糾する芽を生じさせるものだ。

ハーバード大学版では、医療事故には医療システムのエラーの問題が隠れている場合があり、当事者たる現場の医療従事者に対して他のスタッフ・医療機関経営陣がバックアップすることの大切さも記されている。全社連傘下の医療機関ではどうなのだろうか。医療機関幹部からのサポートなしで、まずは謝罪するべきだと命じられるとすると、医療従事者の士気は大いに下がってしまうに違いない。

ハーバード大学のマニュアルのタイトルを、「真実説明・謝罪マニュアル」と全く異なる名称にするのは、ハーバード大学に対する冒涜ではないのだろうか。



以下、引用~~~

まず患者に謝罪 過誤判明前でも 全社連採用医療事故マニュアル
08/06/25
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社



医療事故マニュアル:まず患者に謝罪 過誤判明前でも--全社連採用



 全国52カ所の社会保険病院を経営する全国社会保険協会連合会(全社連、伊藤雅治理事長)は、医療事故が起きた際に、過失の有無に関係なく患者側にまず謝罪することを柱とした「医療有害事象・対応指針」を策定し、今月から運用を始めた。責任が明らかになるまで謝罪はしない多くの医療機関とは正反対の対応で、病院グループ全体でマニュアル化した例はないという。全社連は「患者本位の医療への一歩」と説明している。

 指針の基になったのは、米国ハーバード大医学部が06年に刊行した「真実説明・謝罪マニュアル」。東京大の研究者グループが翻訳し、全社連が日本の病院向けに修正したうえで大手病院グループで初めて採用した。

 指針は「隠さない、逃げない、ごまかさない」が基本方針。過誤の有無が明らかでない段階でも、患者の期待に反した結果になったことへの「共感表明謝罪」をするとしたのが特徴だ。

 具体的には、従来は「院内で十分検討した後、病院の統一見解を患者に説明する。親切心や同情で、安易に責任を認めたり補償を表明するのは慎まねばならない」としていた点を、「何が起こったかを直ちに説明し、遺憾の意を伝える」と改めた。最初の説明役についても、「診療科の責任者や病院管理者が複数で」としていたのを「治療を実行した担当医が適任で、担当看護師の出席も患者の助けになる」と変更した。

 同様の対応を04年から実践していた社会保険相模野病院(神奈川県相模原市)では、職員からの有害事象(患者に望ましくない事態が発生すること)の報告が倍増し、透明性が飛躍的に高まったという。指針策定の中心になった沖田極・下関厚生病院長は「医療事故の紛争の多くは、最初のボタンの掛け違いが原因。患者と医師の仲立ちをするメディエーターの養成も進め、新たな医療安全文化を育てたい」と意気込む。

 「謝罪マニュアル」の普及を進めている埴岡健一・東京大特任准教授は「患者と医療側が同じ目線に立った画期的な取り組み。国立病院機構なども追随してほしい」と話している。【清水健二】

コメント

遺憾と謝罪の違いがわからないのか?

遺憾の意の表明と謝罪はまったく違いますね。その程度のこともわからないのでしょうかね? 一応、灯台の准教授なんでしょう? この人たち。。。

日本のDQN家族なら、謝罪される→医療ミスがあったと理解→賠償せよ→刑務所に入って償え と考えるのがあたりまえです。

自由診療で、こちらの言い値を支払っていただいてるのとは違います。まあ、社保だのなんだの、さっさとつぶれてほしいものです。訴訟リスクに見合った十分な利益を載せた自由診療になってくれないと、手術だなんだの、高度医療なんて、馬鹿馬鹿しくて、もう日本じゃとてもやれません。

タイトルからして、意訳というか誤訳というか、元のマニュアルの意図から外れた、ある意図を感じますね。ハーバード大学も、迷惑していることでしょう。東大医科研も、こうした作業を放置しておくのでしょうか。

これは意図的な誤訳です。

原本とまったくニュアンスが違っています。

もう一度云いますが これは質の悪い誤訳です。

これって、裁判になってから開き直る
布石じゃないんですか?

  • [2008/06/28 01:40]
  • URL |
  • nyamaju
  • [ 編集 ]
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ロハスメディカルの記事

 ときどき拝見しています.お世話になっております.
 この記事で取り上げられている方が指針の翻訳?に関わられているようです.
http://lohasmedical.jp/blog/2008/06/post_1256.php
 独自の考えをお持ちのようです.

三河茂喜さん

読ませていただきました。確かに、ユニークな考えの持ち主のようですね。原則免責が、医師の保身のためではなくて、医療事故再発・急性期医療萎縮を防ぐための社会的要請であるはずなのですが、それはきっぱり切り捨てている様子ですね。ハーバード大学のマニュアルの意図的な意訳(というか、新しい文章の創作)はいただけないと思います。

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